落語が好きになったのは、20年以上も前の話。
日曜夜のNHKラジオの「真打ち競演」(現在は土曜朝)で落語を聞いたり、図書館で落語の本を借りて読んだり。
田舎だったので寄席や落語会などほぼなく、金もない学生時代。落語は生で見られるものではありませんでした。
初めて生で落語を見ることができたのは学校寄席。
なんとトリを務めるのが、当時私が大好きだった故・春風亭柳昇師匠!興奮のあまり、枕で話したところしか覚えていないという有様です。
それから大須演芸場のある名古屋に引っ越してきたんですが、まだその頃にはネットでコンサートや落語会の情報を集めるなんてことができる時代でもなく、私も一人でイベントに行くのがニガテだったので、結局一度も行かないまま、大須演芸場は幕を閉じてしまいました。
状況が変わったのは今年に入ってからのこと。
Twitterで落語の話になった時に、
「春風亭柳昇が好きだったんすよ。高座で替え歌のカラオケうたっちゃったり、究極超人あ~るに本人登場しちゃったりするし。最近の人はさっぱり分かんないんですが」
「最近だと柳家喬太郎師匠が面白いですよー」
てなことを教えてもらって、さっそく聞いた「時そば(別名:コロッケそば)」がまあ、おもしろいのなんの。
……というあたりの話は前にも書きましたね
前座噺ばかり三本やるという趣旨のCDもものすごいおもしろい。
著書も二冊読んだ。
その内の一冊が「落語教育委員会」。
同名の落語会が名古屋にも来ると聞いて、さっそく取りましたねチケット。前売り3,600円に発行手数料とか込みで、4,000円ちょっと。
(この頃、宝塚の地方公演やクラシックのコンサートにちょっと無理して行ってた身には、それらに比べるとチケット代が半額程度というのは有難かった)
7/15の演目
・月の家鏡太「転失気(てんしき)」
・柳家喜多八「青菜」
仲入り
・三遊亭歌武蔵「もう半分」
・柳家喬太郎「宴会屋以前」
演目の前に時事ネタをたっぷり仕込んだ携帯電話の電源は切りましょうのコント、前座の方が枕でこの公演の旅行の途中であったエピソードを話し、喜多八師匠がいかにも夏らしい「青菜」で直しを飲み、歌武蔵師匠は怪談めいた「もう半分」でゾッとさせる。
大トリ、この日の全ての演目をネタに取り込みつつ(酔っぱらいが「もう半分」っつって酒飲んだり、直しを注文したりする)、昭和の芸能の世界にオマージュを捧げているかのような柳家喬太郎師匠の創作落語「宴会屋以前」。
最高の気分で会場を後にしたのでした。
んで、ついこないだも落語教育委員会が名古屋に来たので見に行きました。
11/21の演目
・三遊亭歌むい「牛ほめ」
・柳家喬太郎「カマ手本忠臣蔵」
仲入り
・柳家喜多八「七度狐(しちどぎつね/ななたびきつね)」
・三遊亭歌武蔵「甲府い」
しょっぱなの携帯電話を切りましょうのコントは落語「芝浜」のパロディ……なのですが、途中でオチのための伏線張るのを忘れてグダグダに。携帯電話の電源を切らせるためのコントであることが伝わらないという。
喬太郎師匠の「カマ手本忠臣蔵」、枕で落語家版忠臣蔵キャストを考えてみる話をするんだけど、これが私にはちょっと分かんなくて。忠臣蔵も他の落語家の方もあんまり知らんのです……
本編は色んな意味でひどい。話自体も枯れ選でカマの浅野内匠頭が、酒の勢いで一晩だけ寝た吉良上野介を松の廊下でストーキング(と書いて改めてひでえなコレと思った)。
さらに開幕コントのトチりのショックから抜けてないのか、喬太郎師匠はカミカミなのであった。
そこに追い打ちをかけるかのように客席で鳴る携帯電話の着信音。ああもうどうしようこれ。
そのような状態であっても、カミカミも着信音もすべて話のネタにして、堂々と最後まで演じきる喬太郎師匠はやはりプロであった。
喜多八師匠は怪談と見せかけてスットコな話である「七度狐」、の前にちょっと色気のある傘の妖怪の小咄(中編くらいの長さ)やってたんだけど、タイトルが分からない(「落語 傘 妖怪」とかで検索かけると、東方シリーズのキャラがたくさん出てきて結局分からない)。
七度狐は元々が上方の話だそうで、途中で鳴り物が入ります。本気でビビりましたここ。
トリの歌武蔵師匠は「甲府い」、最初に出てくるスリ以外には基本的に信心深くて頑張る人ばかり出てくるという話で綺麗にまとめる。喬太郎師匠のカマ手本忠臣蔵がアレ過ぎる話だったのでバランス調整なんでしょうかこれ。
ある意味貴重な喬太郎師匠を見られたのでこれはこれで良いかなーとも思うのですが、古典を演じる喬太郎師匠も見てみたいですね。落語教育委員会だと古典はあんまりやらないのかな。
今回もらったチラシで、歌武蔵師匠と喜多八師匠の独演会のお知らせはあったんだけど、喬太郎師匠のはなかったんですよ。むう残念。
他にも気に入る落語家が見つかるかもしれないですし、全然知らん人の落語会にも行ってきましょうかね。