江戸川乱歩のここが好き その1「触覚」

ここ数年、江戸川乱歩を読むのにハマっている。
少年探偵団などの子供向けの作品を除いて、ほとんど読んでしまったので、どういうところが好きなのかをまとめておきたいと思う。

今回は「触覚」を取り上げたい。
もちろんネタバレ放題なので、未読の方は注意されたい。というか、未読の型は以下の文章の意味が分からないと思います。

2017/08/02現在で、青空文庫で50作品程度が読めるようです。
どの書籍のどの作品が収録されているか、などは乱歩の世界様が詳しい。
私は、様々なバージョン違いを細かく網羅している光文社文庫の全集が気に入っている。

触覚に特化している作品といえば、まず「盲獣」を挙げたい。
主人公というか、犯人である「盲獣」はタイトルどおり盲目であるが、代わりにものすごい触覚にこだわる。やたらと手触りのいい彫刻だの床だの壁だのと作り、乱歩おなじみのパノラマ楽園とはまた一味違ったパラダイスを創造する。
(目が見えないかわりに他の感覚が鋭くなる、みたいな話は聖闘士星矢の乙女座のシャカとか思い出すわけだが、まあそれはいい)
最初は不気味だの気持ち悪いだの何だのとこぼしている被害者、水木蘭子が誘拐されてから、盲獣のパラダイスや盲獣自身の触覚愛に目覚めていくところがこの作品の一番の読みどころ。小説なんだから当然で触りなんて分かるはずがないのに、文章が巧みなものだから「うわあ、こりゃほだされても仕方ない」と感じてしまう。大変にフェティッシュでエロいです。
蘭子の飽きてからの中盤以降、次々と別の連続誘拐→殺人→鎌倉ハムという斜め上なグロ展開になってしまうのは(これはこれで面白いんだけど)なんか軌道外れちゃった感が強くて残念。「パノラマ島綺譚」もそうなんだけど、殺人要素が無くても面白い話になったんじゃないかなあ。

アクティブな触覚に対して、パッシブな触覚が登場する作品が「人間椅子」。短編だし、殺人要素も無いので、安心してお読みいただけます。フェチ度は盲獣より上がってる気もしますが。
直接触れるのではなく、椅子の革一枚隔てての触覚、というあたりに病の重さを感じます。
『幸せな方の「お勢登場」』と言っても良いですね。自分から閉じこもる方に行くのは同じなんだけど、その後出られなくなるか、色々と楽しんでしまう方向に行くかという意味で。

更に受け身の度合いと病の重さをひどくしたのが「芋虫」。
盲獣に存在しないのが視覚→須永中尉が夫人に最後に奪われるのが視覚、男女の受け攻めが逆、という意味では「盲獣」の鏡写しではないか、とふと思いました。
乱歩あるあるの『閉じ込められる』系の話の多さもそうですが、最終的に触覚以外のすべてが失われる「芋虫」を読んでいると、ひとつの感覚だけに陶酔したい、みたいな願望があるんじゃないかと。

色々とひどい感想を書いている気がしてきましたが、「人間椅子」「芋虫」は何も足す必要も減らす必要もない傑作だと思っています。

上記の3作品に比べると要素が弱めではありますが、「闇に蠢く」の前半や「防空壕」などもやや触覚フェチ感がありますね。
共通しているのは、顔の良さよりも身体のエロさが大事ですという……うーん、やっぱりロクでもない感想になった気がする。

↓「盲獣」収録

↓「人間椅子」収録

↓「芋虫」収録

↓「闇に蠢く」収録


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