LEGOムービーを褒めちぎる

始まって早々、映画会社ロゴがいきなりレゴ。
主人公がレゴ。乗り物がレゴ。建物がレゴ。レーザービームがレゴ。
爆風がレゴ。水しぶきがレゴ。突き破られる太陽がレゴ。
レゴの、レゴによる、すべてがレゴになるレゴ映画。
レゴブロックの映画化作品として、とてもこれ以上のものが作れるとは思えない。それが「LEGOムービー」です。

ここ数年で見た映画の中で一番面白かった。

あまりネタバレはしていないつもりですが、素の状態で観賞したい人は見た後で読んでね。

そもそもこの映画を見に行ったのは、「音楽を担当しているのがDevoのマーク・マザーズボウである」「ついったーの私のTLでの評価が妙に高い」というだけの理由だけでして、特に期待もしていなかったし、予告すら見てなかった。

こちらは字幕版の予告。素晴らしいので貼っときます。

この映画のなにが素晴らしいのか。
まずは何と言っても映像美。執念すら感じさせるような、端から端まで全部レゴブロックまみれの映像、というのはもうそれだけで楽しい。
レゴの人形が自分で自分の乗り物をガシガシ組み立ててしまうというおもしろさ。
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笑えばいいのか興奮すればいいのか分からなくなるアクションシーン。飛び散る破片や火花はもちろんレゴ。
テンポの良い展開の速さも良い。緩急の付け方が天才的としか言いようがないほどの巧みさである。「いいかー、3つ数えるぞー。3(ドカーン)」とかそういう。ドリフか。
(英語音声では観賞してないけど)吹替陣の仕事も本当にいい。翻訳をした方も、声優さんも実に良い仕事をしている。

それでいて、「未来世紀ブラジル」や「リベリオン」を彷彿とさせる様なディストピアを感じさせる世界観。
それに対抗し、レゴでバイクを作り、宇宙船を作り、多数登場する有名キャラ(ただしモブ)の力を借りつつも、その中で自分には何が出来るのかを探し出して行く燃える展開。
王道?いや、その判断はまだ早い。
何しろ劇伴担当&テーマソングのプロデュースはBeautiful Worldのマーク・マザーズボウだ。音楽のみならず話の方も一筋縄ではいかない。

この映画の根っこにあるのはレゴ精神だ。Makerスピリッツやものづくり魂などと読み替えても可。
自分がつまらない平凡な人間?
自分が周りから変人だと思われている?
どっちだっていいじゃないか。なんか作って遊ぼう!楽しいぜ!
ものを作る楽しさや好奇心の背中を軽く押してくれる。そんな映画。
私がArduinoを購入して遊び始めたのもこの映画を見た直後だった。
その後の私の楽しみっぷりは、このブログの過去記事を見てもらえれば(さりげなく宣伝
レゴブロック自体は買わないんかい、というのはまあその。

そして、人の作ったものを自分の好き放題にした人は、やはり人に自分の作ったものを好き放題にされることを許容しなければならない。
そんな啓蒙も含まれてたりしてね。

お気に入りのキャラは宇宙船!宇宙船!な80年代の宇宙飛行士。かわいい。
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動きが速すぎて見切れてますが。
メインキャラの一人がバットマン、というのを知らなかったのは嬉しい誤算だった。ポスターに思いっ切り映ってるのに。
映画「バットマン・リターンズ」は私のオールタイムベストの1位に君臨してるし、アメコミの「ダークナイト・リターンズ」も好き。

この映画のバットマンはどちらかというとボケ役でええカッコしいなんだけどね。いいキャスティング。
それからタートルズのミケランジェロ。出てくるシーンは一か所だけだったと思うけど、モブのシーンよく聴いてると「カワバンガ!」って何回か言ってます。

・日本語吹替版CMの功罪

唯一の不満点がこれ。少なくとも私はこのこの予告編を見ていたら、映画館では観賞しなかっただろう。
(私は自分が嫌いな物にはリンクを張らない主義なので、気になる方はご自分で検索なさってください)

流行語でゴテゴテにデコレーションされた予告編に反して、映画本編にそんなセリフはこれっぽっちも出てこない。
公開中にTwitterで「吹替はなんかアレっぽいから見たくないんだよな……」というツイートを見た。本来なら映画館に足を運んでいたはずの人を戸惑わせる程度の悪影響が、あの予告編にはあったわけだ。
しかも、この映画の公開は吹替がメインだった。字幕の上映館は全国で2件しかなかった。それを踏まえた上でこのCM展開はあまり好ましいとは思えない。
元々この映画を見たいと思っていた人が映画館に行きたくなくなるんじゃあ逆効果だ。

そもそもこの映画のメインテーマのひとつとして、「流行に乗らずにはいられない人」と「自分のやり方じゃないと気が済まない人」の対比というのがある。そこまで考えた上で予告を作っているなら話は違うが、とてもそうとは思えないほど、この予告は酷い。

話は横にそれるが、予告編と本編で翻訳が変わるパターンは前から気になっていた。
たとえばザ・ロック(1996)。
予告では「僕の名は、スタンリー・グッドスピード」「話が早そうだ」
となっていたのが、本編では「いい名前だ」と小ネタがなくなっていた。
去年公開されたパシフィック・リム(吹替版)は、テレビのCMでは英語版通りに「エルボーロケット!」となっていたのが、本編では「ロケットパーンチ!」に改変されていた。映画館で「え?」ってなっちゃったよ。
キャッチーにしたいのは分かるが、ロケットパンチならやっぱり飛んでってくれなきゃ。エルボーロケットの方がこの場合は「らしい」と思う。

もう一点。
少ない声優で全員の吹替やってるんですよスゴいでしょう!という自虐なんだか貧乏自慢なのかさっぱりわからない売り文句も意味不明だった。
前述したパシフィック・リムのように豪華吹替陣!みたいなのなら理解可能。
アイドルや俳優など畑の違う人を声優として起用するのも、好き嫌いは別として理解できなくもないんですが。

もちろん悪影響だけではないだろう。
流行語がたっぷりと使われている予告編を見て映画館に足を運び、「見て良かった」と感じた人もいるとは思う。
少ない人数で吹替頑張ってるのか、お手並み拝見と行こう、と見に行く人もゼロではないだろう。
それによって人気にどう影響が出たかは、この映画を見た人、予告編だけ見た人、などと分けてアンケートでも取るしかないんだろうけど……なにしろ同時期に「アナと雪の女王」というバケモノ級ヒット映画があったから、有意な結果が出るとも思えないなあ。

褒めちぎるはずが、予告詐欺批判になってしまった感が強い。
次から気をつけます。

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